単行本「失われた手仕事の思想」

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古本屋で見つけたこの本は、著者自らが全国を回り、鍛冶、萱葺き、籠細工、石工、木炭作り、木挽などの職人を訪ね、受け継がれてきた技法や仕事に対する心構え、生活風景、職業の歴史的背景などを詳細に記録した本です。

著者は多くの職人からの聞き取りを基に、彼らの中に共通して横たわる「思想」を簡潔に示してくれました。

「一人前の職人になることはその職業にあった体を作り、その職業に見合った技を体に覚えさせ、いつでもその仕事のことを考える姿勢を習慣づけ、そしてその職業で生きるための倫理と社会の中で自分たちがはたす役目を知ることにある」

目の前のものに全力で取り組む、これしかないのですよね!ありがちな言葉ですけど、経験してみて改めてその大切さに気づきます。

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この本が書かれた1990年代当時は、著者が悲観しているように手仕事の仕事が軽んじられ、どんどん職人仕事は失われ、効率優先の大量生産・大量消費社会でした。しかし、2016年現在、その風潮は少し変わってきているように感じます。手作りの良さが再評価され、高くても品質の良さを選ぶ人が増えているように思います。海外でもメイド・イン・ジャパンはひとつのブランドになっていますしね。

「人は人の手によるぬくもりを忘れない」という言葉はうれしい限りです。次の未来のことはわかりませんが、著者の絶望は杞憂であったと信じたいです。

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