網走の積雪が非常に少ない。
降雪自体少ない上に、降っても溶けてすぐになくなってしまう。道路はアスファルトがむき出しのままで運連しやすいが、なんとも寂しい限りである。
1月下旬には東京では20数センチの雪が降り、SNS上には雪にはしゃぐ人たちが溢れていた。
交通機関がマヒして大変そうだなと思いながらも、雪の少ない網走から羨ましく見ていた。
雪が降らなければ冬ではないと道民は言うが、まさしく短い冬を惜しむようにSNSには雪だるまが溢れ、みな季節を楽しんでいるように見えた。
1月11日、特に予定もないのでフラリと知床ウトロ方面へ足を伸ばしてみた。夏はよく撮影や釣りに行く場所だが冬は少し足が遠のいていた。
天気は良いが低気圧が近づいていて、ウトロへ向かう海沿いの道路には、冬の日本海を思わせるような波飛沫が飛んできていた。
ふと左前方を見ると白い一帯が見える。白波より大きく、物体というより一帯という方が合っている気がする。まさかと思って慌てて近づくと、まさかの流氷だった。
オホーツク海に流れ着く流氷は、アムール川から流れ、海流と風によって日本まで流れ着く。アザラシやオジロワシ、キツネなんかもこの流氷に乗ってシベリアから道東まで渡るらしい。
今回のものは流氷本体ではなく、小さな破片が低気圧の影響で「はぐれ流氷」として流れ着いたものだったが、それでも1月に見たのは初めてだったし、畳より大きい氷の塊がびっしりと海岸に打ち寄せられている光景には心躍るものがあった。
2月になればきっと海一面に広がる流氷が見られるはずだし、今年こそは流氷ウォークを体験してみたい。観光で来る際は絶対にオススメする知床の名物だ。人が海の氷のうえではしゃぐ姿は日本広しといえどもここだけだと思う。
あいかわらず季節の移り変わりを楽しんでいて、春夏秋冬をはっきり感じられる場所で生活できていることが嬉しい。人が生きるうえで大切で些細なことを感じながら写真にしていけたら最高だ。
もうすぐ移り住んで2年が経つが、まだもう少しはここで写真を撮っていたい。何がそうさせるのかわからないが、まだまだ見ていないものがあるはずだし、もっと見たい。その感動やきらめきの記憶を記録していきたい。
それに共感してくれる人がこの世界にはきっといるはずだ。
暮らしているアパートのある丘から流氷が見えるまであとわずかだ。
写真家・松井宏樹